生命保険金に相続税はかかる?非課税枠についても解説

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生命保険金に相続税はかかる?非課税枠についても解説

更新日更新:2021/09/17

公開日公開:2021/08/30

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ご家族が亡くなったことにより、生命保険金を受け取る場合もあるでしょう。その際、生命保険金を受け取ると、その生命保険金は相続税の対象となってしまうのでしょうか。

この記事では、生命保険金にかかる税金や、相続税の対象になる場合の非課税枠などについて詳しく解説します。

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ひとことメモ

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被相続人が保険料を負担していた生命保険金は、原則として相続税の対象となります。しかし、保険契約や約款で受取人が指定されている生命保険金は相続財産ではなく受取人の固有財産だとみなされるため、遺産分割協議をする必要はありません。

保険料の負担者や、相続放棄の有無などによっても対応が異なるため、事前に確認しておきましょう。

生命保険金は保険料の負担者によってかかる税金が違う

生命保険契約の被保険者が亡くなったことにより受け取った生命保険金には、原則として税金がかかります。しかし、かかる税金の種類は一律ではありません。

生命保険金に対してかかる税金は、その保険契約の保険料を誰が支払っていたのかによって次のように異なります。

なお、「被保険者」とは、その保険契約の対象者のことを指します。死亡保険金の場合には、その人が亡くなった場合に生命保険金が支払われる対象者のことです。

生命保険金が相続税の対象となる場合

生命保険契約の保険料を負担していたのが被保険者で、その相続の被相続人(亡くなった方のことを指します)本人であった場合には、被保険者の死亡により支払われた生命保険金は、相続税の対象となります。

たとえば、父の死亡により長男が受け取った死亡保険金の保険料を、父が生前に支払っていたような場合です。

この場合については、後ほど詳しく解説します。

生命保険金が所得税の対象となる場合

生命保険契約の保険料を負担していたのが保険金受取人であった場合には、被保険者の死亡により支払われた生命保険金は、所得税(一時所得)の対象となります。

たとえば、父の死亡により長男が受け取った死亡保険金の保険料を、長男が支払っていたような場合です。

この場合には、保険金の受取人が、受け取った年分の確定申告をします。ただし、所得税の対象になるのは受け取った保険金から支払った保険料を控除して残った部分のみです。一時所得にはさらに50万円の特別控除があり、残った金額のさらに2分の1が課税対象となります。

生命保険金が贈与税の対象となる場合

生命保険契約の保険料を負担していたのが被保険者でも保険金受取人でもない人であった場合には、被保険者の死亡により支払われた生命保険金は、贈与税の対象となります。

たとえば、父の死亡により長男が受け取った死亡保険金の保険料を、母が支払っていたような場合です。

この場合には、保険金の受取人が、受け取った年分の贈与税の確定申告をします。

参考:『No.1750 死亡保険金を受け取ったとき 国税庁』

生命保険金の相続税の非課税枠とは

ここから先は、上の3つのパターンのうち死亡保険金が相続税の対象となる場合に絞って解説します。

生命保険金には特別な非課税枠があり、非課税枠を使える場合には、生命保険金から非課税枠を控除した残りのみが相続税の対象となります。では、詳しく見ていきましょう。

相続税の非課税枠が使える人・使えない人

相続税の非課税枠は、すべての人が受け取った生命保険金に使えるわけでありません。生命保険金の非課税枠が使えるのは、被相続人の相続人が受け取った生命保険金に限定されています。

そのため、たとえば内縁の配偶者や養子縁組をしていない配偶者の連れ子など相続人ではない人や、相続放棄をしたことで相続人ではなくなった人が受け取った生命保険金には、非課税枠を使うことはできません。

相続税の非課税枠の計算方法

相続税における生命保険金の非課税枠は、次のように計算をします。

生命保険金の非課税枠=500万円×法定相続人の数

この非課税枠を計算する際には、次の点に注意しましょう。

非課税枠はその相続で受け取った生命保険全体の枠である

生命保険金の非課税枠は相続全体での枠であり、法定相続人に対してそれぞれ500万円の枠が割り当てられている訳ではありません。

たとえば、妻と長男、長女が法定相続人である場合に、妻に500万円、長男に500万円、長女に500万円の枠がそれぞれ設けられているのではなく、あくまでもその相続全体での枠が1,500万円です。

そのため、このケースで妻が1,200万円の生命保険金を受け取り、長男と長女は一切保険金を受け取らなかったとした場合でも、全額が非課税となります。つまり、この相続全体で相続人が受け取った生命保険金の合計が1,200万円であり、これは相続全体の非課税枠である1,500万円を下回るためです。

遺産の分け方では変動しない

非課税枠の計算で使う「法定相続人の数」とは、法律で決まった相続人です。そのため、その相続で何も財産を受け取らなかった相続人がいても、変動はありません。

たとえば、妻と長男、長女の3名が法定相続人であれば、生命保険金の非課税枠は1,500万円(500万円×3名)となります。この場合、長男と長女は一切財産を受け取らずすべての財産を妻が相続したとしても、非課税枠は1,500万円のまま変動しないということです。

遺言があっても変動しない

生命保険金の非課税枠は、遺言書があっても変動しません。

たとえば上の例で、3人の法定相続人のほか法定相続人ではない孫2名に対しても財産を遺贈する遺言書があったり、3人の法定相続人には一切財産を相続させず友人に全財産を遺贈する内容の遺言書があったりしても、生命保険金の非課税枠は1,500万円のままです。

相続放棄をした人がいても変動しない

生命保険の非課税枠は、相続放棄をした人がいても変動しません。
たとえば上の例で、長男と長女がともに相続放棄をして、その結果被相続人の兄弟姉妹や甥姪の計7名が相続人になったとしても、生命保険金の非課税枠は1,500万円のままです。

なお、非課税枠の金額自体は相続放棄があっても変わりませんが、相続放棄をした人が受け取った生命保険金には、非課税枠を適用することはできません。

養子には算入制限がある

養子の相続での権利は、実の子となんら違いはありません。
しかし、生命保険金の非課税枠を計算するための法定相続人の数に算入できる養子の数には、次の制限があります。

  • 実子がいる場合:1人まで
  • 実子がいない場合:2人まで

ただし、幼少期に実の親が養育できないなどの事情で他家の養子となった特別養子は実子と同様に扱われるため、この制限にもかかりません。

生命保険金の非課税枠を超えた生命保険金は相続税の対象になる

その相続全体で相続人が受け取った生命保険金の合計が非課税枠内におさまるのであれば、生命保険金に相続税はかかりません。

一方で、次のものは預貯金や土地、建物など他の相続財産と合算され、相続税計算のベースとなる「課税価格の合計額」に組み込まれます。

  • 相続人以外の人が受け取った生命保険金全額
  • 相続人が受け取った生命保険金から非課税枠を控除した残額

相続税は、これらの生命保険金も合算した課税価格の合計額から次の「相続税の基礎控除額」を控除した残りに対してかかります。

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

つまり、課税価格の合計額が相続税の基礎控除額を下回るのであれば、結果的に相続税は課税されません。

生命保険の非課税枠計算の具体例

生命保険の非課税枠の具体例を、いくつかのケースで確認しておきましょう。

生命保険金の合計が非課税枠を下回る場合

法定相続人は妻と長男、長女の3名です。妻が1,000万円、長男が300万円の生命保険金を受け取りました。この場合には、次のようになります。

  1. 生命保険金の非課税枠:500万円×3名=1,500万円
  2. 相続人が受け取った生命保険金の合計額:1,000万円(妻)+300万円(長男)=1,300万円
  3. 相続税の課税対象:1≧2のため、生命保険金は全額が非課税

なお、使い切れなかった非課税枠がまだ200万円残っていますが、これを他の財産などから控除することはできません。

生命保険金の合計が非課税枠を上回る場合

法定相続人は妻と長男、長女の3名です。妻が1,000万円、長男が500万円、長女が500万円の生命保険金をそれぞれ受け取りました。この場合には、次のようになります。

  1. 生命保険金の非課税枠:500万円×3名=1,500万円
  2. 相続人が受け取った生命保険金の合計:1,000万円(妻)+500万円(長男)+500万円(長女)=2,000万円
  3. 相続税の課税対象:2,000万円-1,500万円=500万円

受取人の中に相続放棄をした人がいる場合

法定相続人は妻と長男、長女の3名です。妻が1,000万円、長男が300万円、長女が300万円の生命保険金をそれぞれ受け取りましたが、長女は相続を放棄しました。この場合には、次のようになります。

  1. 生命保険金の非課税枠:500万円×3名=1,500万円
  2. 相続人が受け取った生命保険金の合計:1,000万円(妻)+300万円(長男)=1,300万円
  3. 相続税の課税対象:1≧2のため、生命保険金は全額が非課税、長女の受け取った300万円は全額が課税対象

相続放棄をした人がいても、非課税枠の計算には影響しません。ただし、相続放棄をした長女はもはや相続人ではないため、長女が受け取った生命保険金は非課税枠の適用対象から外れます。

生命保険金は相続財産?

被相続人が保険料を負担していた生命保険金は、ここまでで解説してきたとおり、原則として相続税の対象となります。

しかし、相続税はそもそも「相続財産」に対してかかる税金であるはずです。では、生命保険金は相続財産なのでしょうか。

生命保険金は相続財産ではなく受取人の固有財産

保険契約や約款で受取人が指定されている生命保険金は、相続財産ではありません。これは、受取人の固有財産だと考えられます。

そのため、保険契約で定められた受取人が生命保険金を受け取るために遺産分割協議をする必要もなければ、他の相続人の同意を得る必要もありません。自分ひとりで受け取り手続きをすることが可能です。

しかし、相続財産ではないからといって相続税の対象から外してしまうと、預貯金でお金を残せば相続税がかかるのに対して生命保険金ならいくらでも非課税で渡せる事態となってしまい、非常に不合理です。そのため、相続税法で生命保険金を相続財産と「みなす」と規定し、特別に相続税の対象としています。

生命保険金を分けると贈与税がかかる?

受取人が受け取った生命保険金を他の相続人などに分配すると、贈与税の対象となる場合があるため、注意が必要です。

たとえば、妻が受け取った生命保険金を長男や長女にもいくらか分けたいと考える場合もあるでしょう。しかし、生命保険金は受取人の固有財産です。妻が受け取った生命保険金を長男や長女に分配することは、単に妻が自分のお金を長男や長女に贈与をすることとなんら変わりがありません。

仮に生命保険金を分配するのであれば贈与税の非課税限度額内で渡すなど、贈与税にも注意しましょう。

生命保険金は相続放棄をしても受け取れる?

相続放棄をすると、たとえ受取人として指定されている場合であっても生命保険金は受け取れなくなってしまうのでしょうか。

ここでは、相続放棄の概要をお伝えするとともに、相続放棄をした場合の生命保険金の取り扱いについて解説します。

相続放棄とは

相続放棄とは、家庭裁判所で申述が受理されることにより、はじめから相続人ではなかったものとされる、非常に強い効果を持つ手続きです。

はじめから相続人でなかったこととなる以上、プラスの財産も一切相続できなくなるばかりか、マイナスの財産も一切引き継がずに済むこととなります。そのため、被相続人に借金が多い場合などに相続放棄を検討するケースが多いでしょう。

なお、単に相続人間で何も相続しない旨の遺産分割協議をまとめることは、法律上の相続放棄ではありません。

相続放棄をしても生命保険は受け取れる

相続放棄をしても、保険契約や約款で受取人として指定がされている場合には、原則として生命保険金を受け取ることが可能です。

これは、相続放棄をすることでプラスの財産も一切相続できなくなることと矛盾するように感じるかもしれません。しかし、受取人が指定されている生命保険金は相続財産ではなく、受取人の固有財産です。そのため、たとえ相続放棄をしたとしても、原則として生命保険金を受け取ることができます。

ただし、上でも解説をしたとおり相続放棄をした人が受け取った生命保険金には非課税枠を適用することはできませんので、注意しましょう。

また、相続放棄をした場合には、受取人が亡くなった人自身となっている医療保険の入院給付金などは受け取ることができません。これは、もともと被相続人が受け取るはずであったものの亡くなってしまったことにより受け取る機会を逃してしまった結果、相続人に受け取る権利が生じたものであり、相続財産に該当します。

相続財産である入院給付金などを誤って受け取ってしまえば、相続を単純承認したものとみなされてしまい、相続放棄が認められなくなってしまう可能性があるので注意しましょう。迷った場合には、相続放棄を申述する先の家庭裁判所や専門家へ相談することをおすすめします。

池邉和美 監修:池邉和美(なごみ行政書士事務所・なごみ相続サポートセンター所長)
行政書士・CFP。愛知県常滑市などの知多半島を中心に、遺言書作成サポートや相続手続き支援などを行っている。著書に「残念な実例が教えてくれる『きちんとした、もめない遺言書』の書き方・のこし方」(日本実業出版社)などがある。
URL  https://ii-souzoku.com/

まとめ

生命保険金も相続税の対象となりますが、非課税枠があるため、非課税枠分までは相続税はかかりません。また、受取人の固有財産という特徴があるため、受取人にスムーズに財産を渡すことが可能です。

生命保険は相続税の節税ができるばかりではなく、相続が起きた後での資金需要への対応など相続対策として非常に使い勝手がよいものです。専門家にも相談のうえ、活用を検討するのがよいでしょう。

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