死亡退職金に相続税はかかる?非課税枠についても解説

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死亡退職金に相続税はかかる?非課税枠についても解説

更新日更新:2021/09/01

公開日公開:2021/08/30

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死亡退職金とは、亡くなったことにともなって勤務していた会社を退職したことなどにより、勤務していた会社などから遺族に対して支給される金銭のことです。受け取った死亡退職金を他の相続人と分ける必要があるのかどうかといった点や、相続税上での取り扱いなどについて、よく分からない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、相続における死亡退職金の取り扱いや死亡退職金にかかる相続税などについて、くわしく解説します。

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ひとことメモ

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受取人の指定がある死亡退職金はその受取人の固有財産であり、相続財産ではありません。しかし、死亡退職金は相続税の対象になります。これには疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。

会社の規定などによっても死亡退職金の取り扱い方は変わります。相続税の非課税枠や相続放棄をした場合の扱いについても合わせて、事前に確認しておきましょう。

死亡退職金は誰のもの?

はじめに、受け取った死亡退職金は誰のものなのか確認しておきましょう。

死亡退職金の支給は、実は会社にとって義務ではありません。そのため、死亡退職金が支給されるかどうかはその勤務していた会社によって異なることを知っておきましょう。

退職金規程などで定めがあればその人の固有財産

死亡退職金を支給してくれる会社であれば、就業規則などで死亡退職金についての規程を定めていることが一般的です。

この退職金規程などにもとづいて仮に配偶者が死亡退職金を受け取った場合には、配偶者が受け取った死亡退職金は配偶者自身の固有財産となります。

このように規程で受取人が決まっている場合の死亡退職金は、相続財産ではありません。他の相続人と遺産分割協議をしたり他の相続人の同意を得たりすることなく、規程で定められた受取人が単独で受け取り手続きをすることが可能です。

また、受け取った死亡退職金を他の相続人に分配する必要もありません。むしろ、規程にもとづいて配偶者が受け取った死亡退職金を他の相続人などに分けてしまうと、配偶者から他の相続人に対する贈与に該当すると考えられます。渡した金額によっては贈与税が課される可能性がありますので、安易に分配してしまうことのないよう注意しましょう。

死亡退職金の一般的な受取人は誰?

死亡退職金の支給対象者については法律で決まっているわけではなく、個々の会社が自由に定めています。

ただし、一般的には「労働基準法施行規則第42条から第45条の規定(遺族補償の順位)に準ずる」などと規定されていることが多いでしょう。

これによれば、死亡退職金の受取人の順位は次のとおりです。

  1. 配偶者
  2. 子で、労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた者等
  3. 父母で、労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた者等
  4. 孫で、労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた者等
  5. 祖父母で、労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた者等

※同順位の者が2人以上ある場合には、その人数によって等分

会社によってはこれとは異なる内容を定めている場合もあるので、正確な情報を知るためには実際に死亡退職金の支給をする会社などへ問い合わせたり、その会社の規程を確認したりする必要があります。

退職金規程などで定めがなければ相続財産

一方で、退職金規程などで死亡退職金の受取人が単に「相続人」とされていたり「被相続人」と定められていたりする場合もあります。

この場合には死亡退職金は相続財産になると考えられ、法定相続人が法定相続分どおりに受け取ることが原則です。

相続放棄をしても死亡退職金は受け取れる?

相続において、たとえば亡くなった方(「被相続人」といいます)に多額の借金があった場合などには、相続放棄を検討する場合もあるでしょう。相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も一切承継しないこととなります。

では、相続放棄をすると死亡退職金も受け取れなくなるのでしょうか。

相続放棄とは

まずは、相続放棄について確認しておきましょう。相続放棄とは、相続が起きてから原則として3か月以内に家庭裁判所に申述をして受理されることにより、はじめから相続人ではなかったものとみなされる手続きです。

相続人ではなかったこととなる効果として、単に「何も受け取らない」との内容で遺産分割協議を成立させることとは異なり、借金などのマイナスの財産も承継しないこととなります。そのため、被相続人に借金が多く、その借金を引き継ぎたくない場合に検討することが一般的です。

相続放棄が受理されると、マイナスの財産のみならずプラスの財産についても一切相続できなくなります。

相続放棄をしても死亡退職金は受け取れることが一般的

相続放棄をするとプラスの財産もマイナスの財産も一切相続できなくなるのであれば、死亡退職金も当然受け取ることができなくなるように感じるかと思います。

しかし、そうとは限りません。退職金規程などで受取人が明示されている死亡退職金であれば、相続放棄をしていても受け取ることができます。なぜなら、上で解説をしたとおり受取人の定めがある死亡退職金は受取人の固有財産であり、相続財産ではないためです。

一方で、受取人が「被相続人」などと定められている場合などには相続財産に該当すると考えられるため、相続放棄をした場合には受け取ることができません。また、「相続人」と定められている場合には、判断が分かれるところです。

この点は退職金規程の書きぶりや支給の決定時期などによって結論が異なる場合もあるので、自分で安易に判断をしてしまうのではなく、相続放棄の申述をする先の家庭裁判所や専門家に事前に相談することをおすすめします。

死亡退職金に相続税はかかるのか

受取人の指定がある死亡退職金はその受取人の固有財産であり、相続財産ではありません。では、相続財産でない以上、死亡退職金に相続税は課税されないのでしょうか。くわしく見ていきましょう。

死亡退職金は原則として相続税の対象になる

結論としては、死亡退職金も原則として相続税の対象になります。

本来、相続財産でないものには相続税はかかりません。しかし、死亡退職金が相続税の計算から外れてしまえば、課税の公平性を保つことが難しくなってしまうでしょう。

そのため、相続税のルールを定めている相続税法により死亡退職金は相続財産と「みなす」と規定され、特別に相続税の対象になるとされています。

なお、生命保険金も受取人固有の財産であり相続財産ではありませんが、死亡退職金と同じ理由で相続税の対象です。

ただし、相続税は、死亡退職金のうち相続税の課税対象となる部分の金額を含んだ課税価格の合計額(相続税の対象となる遺産総額のようなもの)が、次の計算式で算定する相続税の基礎控除額以下であれば課税されません。

相続税の基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続税の計算方法や申告義務などについては以下の記事でくわしく解説していますので、ご参照ください。

死亡退職金が相続税の対象にならない場合とは

死亡退職金であれば必ず相続税の対象となるわけではありません。なかには、相続税の対象にならない場合もあります。

それは、被相続人の死亡後3年を過ぎてから死亡退職金の支給が確定した場合です。

亡くなってからかなり時間が経ってから支給された死亡退職金までが相続税の対象になるとすれば、いつまで経っても相続税を確定することができず、非常に不便でしょう。

そのため、死亡後3年を過ぎた以後に支給が確定した死亡退職金は相続税の対象とはならず、受取人の所得税(一時所得)の対象になるとされています。

死亡退職金は一定額まで非課税となる

死亡退職金は、原則として相続税の対象となります。しかし、受け取った死亡退職金の全額課税対象になるわけではなく、一定額までは非課税で受け取ることが可能です。ここでは、死亡退職金の非課税枠について見ていきましょう。

死亡退職金の非課税枠はいくら?

死亡退職金の非課税枠は、次の式で計算をします。

死亡退職金の非課税限度額:500万円×法定相続人の数

相続人が受け取った死亡退職金の合計がこの式で算定した金額以下であれば、結果的に死亡退職金は非課税で受け取れるということです。死亡退職金のうちこの非課税限度額を超える部分については、預貯金や不動産など他の財産と合算されて相続税の課税対象となります。

ただし、この非課税枠の対象となる死亡保険金は、相続人が受け取った死亡退職金のみです。

たとえば内縁の配偶者や養子にしていない配偶者の連れ子など法律上の相続人ではない人が受け取った死亡退職金や、相続放棄をして相続人ではなくなった人が受け取った死亡退職金にはこの非課税枠は適用できませんので、注意しましょう。

なお、生命保険金にもこれとまったく同じ計算式で算定をする非課税枠がありますが、死亡退職金の非課税枠と生命保険金の非課税枠とは別枠で適用することが可能です。

計算で使う法定相続人の数とは

死亡退職金の非課税枠を計算式は上で解説をしたとおりですが、この計算に用いる「法定相続人の数」を考える際には、次の点に注意が必要です。

相続で財産を受け取らなかった人がいても変動しない

法定相続人とは、法律(民法)で決められた相続人のことです。そのため、遺産分割協議の結果その相続で何も財産を受け取らなかった人がいたとしても、変動することはありません。

たとえば、父が亡くなり母と2名の子がのこされた場合の法定相続人は3名であり、死亡退職金の非課税枠は1,500万円(500万円×3名)です。この場合に仮に母が全財産を相続し、2名の子は一切相続しなかったとしても法定相続人が変わるわけではないため、死亡退職金の非課税枠は1,500万円のままとなります。

遺言があっても変動しない

法定相続人は法律で定められた相続人のため、遺言書があっても変動しません。

たとえば、亡くなった父には母と2名の子がいるにもかかわらず、友人に全財産を遺贈する旨の遺言書を残して亡くなったとします。の場合であっても法定相続人の数自体に変更が生じるわけではないため、死亡退職金の非課税枠は1,500万円のままです。

相続放棄をした人がいても変動しない

死亡退職金の非課税枠は、相続放棄をした人がいても変動しません。

たとえば、亡くなった父の相続人である子が2名とも相続放棄をして、その結果妻と亡くなった父の兄弟姉妹や甥姪の計8名が相続人になったとします。この場合であっても、死亡退職金の非課税枠は1,500万円のままです。

これは、相続税法に「相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人の数とする」と明記されているためです。

養子には算入制限がある

養子の相続での権利は、実子となんら違いはありません。養子であっても相続の権利はあり、その相続分も実子と同様です。

ただし、死亡退職金の非課税枠を計算するうえでの「法定相続人の数」に算入できる養子の数には次の制限があるので、複数の養子がいる方が亡くなった場合には注意しましょう。

  • 実子がいる場合:1人まで
  • 実子がいない場合:2人まで

なお、ここで算入制限の対象となる養子は、戸籍謄本に養子である旨が記載されている普通養子のみです。実の親が養育できない等の事情で幼いころに養子に入った特別養子の場合には、この制限の対象とはなりません。

死亡退職金のほかに支給された弔慰金などの取り扱い

勤続中の方が亡くなった場合には、勤務していた会社などから死亡退職金のほかに弔慰金や花輪代、葬祭料などが支給される場合もあります。

この弔慰金などについては、相続税の計算上、次のように取り扱われます。

  1. 名称が異なるのみで、実質的には死亡退職金であるもの
    全額が死亡退職金に合算されて相続税の対象となる
  2. 上記以外のもの
    それぞれ次の金額までは非課税となり、次の金額を超える部分は死亡退職金に合算されて相続税の対象となる
    (1)被相続人の死亡が業務上の死亡であるとき:被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額
    (2)被相続人の死亡が業務上の死亡でないとき:被相続人の死亡当時の普通給与の半年分に相当する額

なお、「普通給与」とは俸給や給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額をいいます。

参考:『No .4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い 国税庁』

池邉和美 監修:池邉和美(なごみ行政書士事務所・なごみ相続サポートセンター所長)
行政書士・CFP。愛知県常滑市などの知多半島を中心に、遺言書作成サポートや相続手続き支援などを行っている。著書に「残念な実例が教えてくれる『きちんとした、もめない遺言書』の書き方・のこし方」(日本実業出版社)などがある。
URL  https://ii-souzoku.com/

まとめ

死亡退職金は、その死亡退職金を支給する会社の規定などにより取り扱いが異なる場合があります。判断には専門的な知識が必要となる場合もあるため、お困りの際には専門家へ相談しましょう。

また、死亡退職金は原則として相続税の対象です。非課税枠があるとはいえ、多額の死亡退職金を受け取った場合には相続税の計算に大きな影響を与える場合がありますので、相続税がかかる可能性がある際には税理士などの専門家へ相談するとよいでしょう。

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