遺言があっても遺留分が優先?相続財産で揉めないための対策とは

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遺言があっても遺留分が優先?相続財産で揉めないための対策とは

更新日更新:2020/07/21

公開日公開:2020/07/09

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遺言書を作成しておくと、遺産をどんな割合で誰に渡すのかを生前に決めておくことができます。たとえば遺言ですべての遺産をひとりに相続させたいと考えていたり、特定の相続人を相続から除外したいと考えていたりする人もいるのではないでしょうか。

しかしながら、たとえ遺言をきちんとしていたとしても、遺留分が考慮されて故人の意志どおりに遺産の相続がなされないこともあります。相続のトラブルを回避するためにも、事前の対策が重要です。

そこでこの記事では、故人の意志に添った形で財産の相続を行うための遺言書の書き方や、遺留分対策の方法についてご紹介します。

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ひとことメモ

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遺言書を作成しておくことで、遺産を誰にどのくらいの割合で分配するのか分かり、穏便に済ませられると思っている方も多いと思います。しかし、遺言書通りに分配できるとは限らず、更にはトラブルのきっかけにもなりかねません。

自分の意思が尊重されるよう、今回は遺留分とは何か、相続させたい人に問題なく相続できるようにするための対策方法について見ていきましょう。

遺言よりも遺留分は優先される

相続人には、被相続人の遺産を一定割合受け取る権利があります。もし遺言に「全財産を譲る」などとしてひとりの相続人がすべての財産を受け取るように記されていたとしても、法に基づいて遺留分を主張すれば、権利がある遺産を取り戻すことが可能です。

この権利を「遺留分減殺請求(現在は遺留分侵害額請求)」と呼びます。

相続の遺留分とは

もともと遺言で誰にどれだけの遺産を相続するか指定することは可能で、法的に定められた割合と異なっていても問題がないとされています。これは法定相続分よりも遺言の効力が勝っており、遺言があれば法定相続分を無視できる規定となっているためです。

ただし、だからといってすべての財産が自由になるわけではありません。「被相続人の財産は相続人の協力があってこそ築かれたものだ」という考え方があり、受け継がれる財産が相続人の暮らしを支える意義を有することから、財産の一部分は相続人に受け取る権利があります。この請求が可能となる財産を「遺留分」と呼びます。

遺留分が貰える人と割合

法的に遺留分侵害額請求権をもっているのは、「配偶者」「子」「直系尊属」の場合に限られます。この条件に当てはまっているのであれば、法的に許可された割合で遺産を取得できます。

遺産総額に対する主な遺留分の組み合わせと割合は次のとおりです。

  • 配偶者 1/2
  • 配偶者と子 1/4ずつ
  • 配偶者と父母 配偶者が2/6、父母が1/6
  • 配偶者と兄弟 配偶者のみ1/2
  • 子 1/2
  • 父母 1/3
  • 兄弟 請求権なし

ちなみに、子が複数いる場合は子の遺留分の中で分け合うことになります。たとえば配偶者と子ども2人がいる場合、配偶者に1/4、子2人にそれぞれ1/8ずつとなります。

遺留分が請求できない人

被相続人の兄弟姉妹については、遺留分の請求権はありません。そのため、遺言書に相続が不可である旨の記載をしておくだけで、どれほど異議を唱えても主張は認められず、遺産を1円ももらえないこともあります。

遺言者は、仮に相続を望んでいない相続人が兄弟姉妹にいるのであれば、遺言書にその人物には遺産を一切渡さずほかの人が受け取るように記すことで容易に拒否できます。仮に相続人が兄弟姉妹のみだとしても遺留分を手にする権利はないので、トラブルが起こらないように生前にすり合わせを行っておくとよいでしょう。

遺留分侵害の遺言が無効になるわけではない

遺留分を超える金額を譲渡すると書かれている遺言書であった場合でも、すべてのケースで法的な効力を失うわけではありません。あくまでも相続人に遺留分の請求権が認められるというだけで、遺言書自体を否定する意味をもつわけではありません。

もし法定相続人が権利を行使しない場合は、遺言書の内容にしたがって遺産の相続が行われます。ただし、相続人が権利を行使する意志を示した段階で効力が発生し、これを拒否することはできなくなります。

遺留分を侵害した遺言の例

遺留分を侵害してしまうと、本来その遺産を受け取るべき相続人から遺言書が不当であることを理由に、金銭請求が行われる可能性があります。たとえば、財産を丸ごと特定の誰かに渡すなどの遺言は遺留分の侵害にあたります。

次の3つのような例では遺留分侵害額請求権の行使対象となり、トラブルに発展する可能性があるので注意しましょう。

すべての遺産を親が長男に相続させた

複数の相続人がいるにもかかわらず、遺産をすべて特定の子どもに相続させる行為は遺留分の侵害とみなされます。

たとえば長男と長女の2人の子がいるとき「すべての財産を長男に相続する」と記述することは侵害要件に該当します。この場合、長女には財産の1/4を渡すように求める権利があり、長男側がこの申し立てを拒否することはできません。

すべての遺産を父親が愛人に相続させた

第三者に遺産を相続させるという遺言書を作成した場合も、遺留分の侵害となります。たとえば「愛人の○○にすべての遺産を譲り渡す」などと記しても、愛人に全額相続させることは不可能です。

仮に妻と子ども2人がいる場合、本来は妻に1/4、子ども2人に1/8ずつ相続の権利があるので、不当に取られてしまった遺産を取り戻すことができます。

前妻が再婚相手との子どもにだけ遺産を相続した

再婚していた場合でも、再婚前の配偶者、現在の配偶者それぞれの間にできたすべての子どもに遺留分の請求権があります。「現在の子にすべての遺産を相続する」と遺言に記すと、前の配偶者の子どもに対して遺留分の侵害となり、トラブルの原因となります。

たとえば再婚前に2人、現在は2人の子がいる場合、4人全員が等しく遺留分を請求する権利をもちます。

遺留分を侵害した遺言のリスク

遺言書に遺留分を侵害するような内容を記載した場合、遺留分侵害額請求を受けてしまうことがあります。必ず行使されるわけではありませんが、この申し立てが行われると、いったんは遺産を受け取っても一定の割合を返すことになるので注意しましょう。

ここでは遺留分侵害額請求についての概要と、時効や除斥期間について解説します。

遺留分侵害額請求される

遺言によって不当に遺留分を侵害されたときに、定められた金額を取り返すために請求の手続きをとることを遺留分侵害額請求といいます。

遺留分は法的に認められている権利であるため、申し立てられた場合、侵害した側は基本的に拒否できません。そのため、請求された金額をすみやかに返還する義務が生じます。ただし、遺留分の請求は権利であって強制されるものではないので、必ずしも請求しなければならないというわけではありません。

遺留分侵害額請求の時効と除斥期間

遺留分を請求できる期間には一定の制限があり、過ぎてしまうと無効となってしまうので注意しましょう。

相続の権利が生じて、遺言の内容が不当であると判明したときから1年間の間に請求の手続きを行わないと時効を迎えます。ただし、時効までの間に請求すれば権利の消失を防ぐことができます。

その後、10年間経過すると遺留分の権利を失効してしまいますが、この期間を「除斥期間」と呼びます。請求権は完全に消失するため、以後請求を申し立てることはできません。

遺言でできる遺留分対策

相続人が遺留分を請求することは法的に認められた権利なので、一方的に剥奪することは基本的に不可能です。しかしながら、生前に遺言を用いて対策をとることで、おおむね希望に沿った相続を実行できるでしょう。

主な方法として、公正証書で遺留分侵害額請求の順位を指定する、遺言に付言事項を記すなどが考えられます。

公正証書で遺留分侵害額請求の対象を指定

相続人が遺留分請求する場合、どの財産から順番に請求すべきかを遺言で指定することが可能です。この方法を使うと、ある程度特定の相続人に対して自分が相続したい財産を譲り渡すことが可能になるでしょう。

たとえば不動産を確実に渡したいなら、遺留分請求の順序を「預貯金→乗用車→不動産」のように指定します。特に指定がない場合はすべての財産を均等な割合で返還する必要が生じるので、できるだけ詳細に記載しておくとよいでしょう。

遺言に付言事項を記す

付言事項は法的な効力をもちませんが、遺言者の意志を伝えるメッセージとなります。特定の相続人に全財産を相続させるよう希望する場合は、「遺留分侵害額請求を行わないようにしてもらいたい」という内容を遺言に付言事項として記すとよいでしょう。

相続人が故人の意志を汲み取ってくれるように期待する方法なので、どんな理由でその人に遺産を譲りたいのかという自分の思いを丁寧に伝えて、同意を得られるように配慮することが大切です。

遺言以外でできる遺留分対策

遺言を用いる以外にも、遺留分の対策方法はいくつかあります。たとえば、特別受益にあたらない範囲で生前贈与を行ったり、生命保険に加入したりするなどの方法が考えられるでしょう。

また、事前に遺留分の放棄を試みる、相続人として不適格な場合は廃除や欠格を裁判所に求めるなど、対応を検討する必要が出てくるかもしれません。

生前贈与する

なるべく多くの遺産を渡したい人に生前贈与することで、死後に相続する財産の総額を減らす方法が考えられます。ただし、1年以内に贈与された財産は無条件で遺留分侵害額請求の対象となるので注意しましょう。

1年以上前だとしても、お互いに遺留分を侵害すると認識している状態で贈与した場合は相続財産とみなされます。さらに、相手が相続人の場合は「特別受益」に該当し、贈与の時期にかかわらず遺留分の対象とされる可能性が高いです。

ただし、扶養の範囲内の贈与であれば特別受益には相当しません

生命保険に加入する

被相続人の死亡によって生じた死亡保険金をひとりの相続人が受け取る契約になっている場合、その保険金は法的に相続財産とはみなされないため、受取人の固有資産とすることができます。

ただし、遺産総額と保険金の額面が同額であるなど、明らかにほかの相続人に対して不平等だと認められた場合には特別受益に値すると判断され、遺留分に含まれる可能性が出てきます。そのため、過剰に偏りが出てしまう契約は結ばないほうがよいでしょう。

生前に遺留分放棄させる

相続人の中に遺留分を請求する可能性のある人がいるときには、遺留分放棄を事前に検討するのもよいでしょう。遺留分は資格をもつ人に請求が認められた権利であると同時に、放棄することも可能です。

ただし、生前に遺留分放棄を成立させるためには、家庭裁判所に申し立てて認可を得なければなりません。また、十分な支援や贈与を行うなど、該当する相続人が遺留分を放棄しても平等性が保たれるなどの妥当性を示す必要があります。

廃除や欠格にできないか検討する

被相続人に対する非行などの理由で遺留分の放棄を求めているものの、当人が応じないときに相続人廃除を求めることがあります。相続人廃除の対象は遺留分の権利をもつ相続人に限定され、家庭裁判所への申し立てが認められれば相続の資格を剥奪できます。

また、被相続人の遺言を実行する際に妨害行為をしたり、生命を害しかねないことを行ったりした場合には相続欠格を認定される場合があります。この場合も相続権と慰留分請求の権利を失います。

遺留分侵害額の現金を用意しておく

遺留分の支払い請求が行われたときにすみやかに支払いができるよう、遺産を相続したい人のもとに十分な現金を用意しておくと安心です。事前に金額を計算して、必要となりうる遺留分を把握しておきましょう。

もし請求があったときに支払いが滞ってしまうことになれば、相続人の生活を脅かすことになりかねません。生命保険は基本的に遺留分の対象とならないので、遺産を渡したい相続人を死亡保険金の受取人に指定しておくことも有効な手段です。

まとめ

相続人は遺産を一定割合受け取る権利をもつため、遺言で遺留分を侵害してしまうと、遺留分侵害額請求を申し立てられてしまう可能性があります。遺留分は法的に認められた権利であるため、申し立てがあった場合、基本的に拒否することはできません。

特定の相手に財産を相続させたいと考えている場合は、公正証書を使って遺留分侵害額請求の対象を指定する、生前贈与や遺留分放棄を行うなどして、遺留分への対策をとるように注意しましょう。

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