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2012年01月 アーカイブ

2012年01月16日

日本の路地空間あれこれ~倉敷・尾道編~

皆さんこんにちは。

「住宅の歴史から考える理想の暮らし」コラムを担当している市川です。

「日本の路地空間あれこれ」をテーマに日本各地の路地を紹介します。

私たちの生活に古くから根付き、暮しを支える道について考えていきたいと思います。

今回は、瀬戸内海に面したの魅力的な路地のある町、倉敷・尾道を紹介します。

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(前回のコラムはこちら>>~日本の路地空間あれこれ~京都編~)

 ◆路地の博物館◆

倉敷は、江戸時代に幕府の直轄地・天領として栄えます。

米や物資を載せた船や荷車の往来で賑わう 商人の町として 、

町家や蔵が川沿いに立ち並び美しい景観を形成しました。

「倉敷」という地名は商人の「倉屋敷」が多く存在していたことからきているようです。

川岸には町家や土蔵が並び、情緒ある柳と調和し、美しい景観を今に伝えています。

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倉敷の魅力は川沿いだけでなく、街中を通り抜ける路地にもあります。

白と黒のコントラストが効いたなまこ壁が、抑制された日本の美意識を醸し出しています。

さらに、路地にせり出した丸瓦の紋様は繊細で、

心地よいヒューマンスケールな路地となっています。

「倉屋敷」の名にふさわしい情緒ある路地空間です。

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◆産業遺産のある町◆

明治に入り産業の町として発展した倉敷。

各地に紡績所が建設され、繊維工業が発達します。

近代化の中心となった紡績工場の代表として、

倉敷紡績工場(現在のクラボウ)があります。

レンガ造りとアーチが印象的な工場は、第二次世界大戦の終結と同時に操業を休止、

しばらくは蔦に覆われて眠っていました。

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そして近年、倉敷の観光客増加に伴いホテルとして再生します。

その印象的な外観は時間の経過が織り成す美観を備え、

倉敷の産業遺産として受け継がれています。

江戸文化と明治の文明開化が融合した、懐かしい時間の流れを体感できる町です。

 

 

◆瀬戸内海を見下ろす尾道◆

尾道は映画やCMのロケ地としてメディアでも度々取り上げられます。

原田知世さん主演の「時をかける少女」などは有名です。

また、志賀直哉の「暗夜航路」など文学作品にも登場する場所です。

尾道の特徴はその特殊な自然地形にあります。

瀬戸内海に隣接しながらも、市の大半が山地となっており、狭い坂道が多く存在します。

小高い丘からは瀬戸内海やそこを行き交う船を一望でき、

自然と人の営みが融和したダイナミックな景色を見ることができます。

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◆寺の町尾道◆

尾道は歴史的建造物の多い町としても知られています。

最も古いもので飛鳥時代、聖徳太子の創建といわれる浄土寺があり、

平安時代にはうしとら神社や千光寺なども瀬戸内海を見下ろすように建立されました。

シンプルで力強い造形が空に映え、日本の伝統的建造物の魅力を感じることができます。

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◆文学の町尾道◆

山と海に囲われ、船が行き交う尾道独特の風景は、多くの作家もまた魅了されています。

ここでは文学作品からみた尾道を紹介したいと思います。

 

明治の文豪 志賀直哉は、ここ尾道で半年ほど滞在し、

「暗夜行路」の執筆活動を行ったといわれています。 以下一文を紹介します。

「その彼方がちょっとした往来ですぐ海だった。

海と言っても、前に大きな島があって、河のように思われた。

何十隻とく漁船や荷船がところどころにもやっている。

そしてその赤黄色い灯の美しく水に映るのが、

いかいにもにぎやかで、 なんとなく東京の真夜中の町を思わせた。」~暗夜行路より ~

船やドックの人工的な灯かりと東京の夜景を水景を通して描写しています。

ここにしかない自然地形が織り成す景観と東京の夜景というのはミスマッチですが、

そうしたした人の営みを包み込む、おおらかさが瀬戸内海にはあるのではないでしょうか。

現在、志賀直哉の住んだ長屋は保存され、当時と同じ風景をそこから臨むことができます。

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そして尾道は、林芙美子著作の「放浪記」の舞台でもあります。 以下一文です。

「5年振りに見る尾道の海はなつかしい。

汽車が尾道にさしかかると煤けた小さい町の屋根が提灯のように拡がってくる。

赤い千光寺の塔が見える。山は爽やかな若葉だ。

緑色の海の向こうにドックの赤い船が帆柱を空に突き刺している。

私は涙があふれていた。」~放浪記より~

作中では、芙美子の心の故郷として多くの情景が描写されています。

郷愁誘う、魅力的な物語りのある町 尾道。

皆さんも是非、足を運んでみて下さい。

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さて、今回のコラムは如何でしたでしょうか?

今回で日本の空間路地あれこれシリーズを終了し、

次回から「日本の生活文化と器としての住まい」をテーマにお話したいと思います。

 

それではまた次回、お会いしましょう。

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◇コラム執筆者◇
「住宅の歴史」から考える理想の暮らしコラム。
ライフスタイルの変化から見えてくるものとは?
住宅の昔と今を紐解きながら、理想の暮らしを考える。

一級建築士 市川 忍(ポラス暮し科学研究所

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