皆さんこんにちは。
「住宅の歴史から考える理想の暮らし」コラムを担当している市川です。
前回より「日本の路地空間あれこれ」をテーマに連載中です。
私たちの生活に古くから根付き、暮しを支える道について考えていきたいと思います。
今回は、江戸東京の下町情緒を残す路地空間「谷中」を紹介します。
(前回のコラムはこちら>>~日本の路地空間あれこれ~福島編~)
◆お寺の多い町谷中◆
谷中を歩く時、お寺の多さに驚かされます。
江戸時代、徳川家光の命により現在の上野公園の場所に 寛永寺が建立されました。
その敷地は今の上野公園の約2倍といわれ、広大な敷地を有していました。
谷中は当時農村でしたが、寛永寺の子院や他の地区から移転してきた寺院が
次々と建立され、 同時に参詣客も増えました。
訪れる人の賑わいともに花屋や墓石屋といった町屋ができ、寺町としての景観が形成されます。
明治になり、多くは宅地に変化していきますが、 震災や戦災の影響が少なかったため、
通り沿いには、今でも多くの寺院や墓地内の大きな樹木が町中に残っています。
お寺の前までくると、門前から境内の奥までぱっと視界が開け、濃い緑と青い空が広がります。
谷中は都心とは思えない景色とめぐりあうことができる場所なのです。
◆路地にとって大切なものとは?◆
さて、路地というという皆さんはどのようなイメージをもたれますか?
道幅が狭く密集したイメージや迷路のように複雑に入り組んだ空間、古い建物・・・
谷中には魅力的な路地がたくさんあります。
まず始めの 路地です。
道幅に対して圧倒的な緑のボリュームは、道路に程よい木陰をつくりだしています。
左手前のお宅は、道路側の屋根の高さが低く抑えられ圧迫感がありません。
そのため奥にある樹木の形もよく見え、大木を中心にした街路景観が形成されています。
こちらは、車が通過できないほどの道に、木製バルコニーがせり出した住まいが並びます。
どこが宅地と道路の境界なのか、何軒の家があるのかわからないほど密集しています。
こういう道なら子供を遊ばせておいても安心ですね。いわば庭としての機能をもつ道です。
こうした路地では、車がある生活は想定できませんが代わりに豊かな外部空間があります。
路地にとって大切なことは「自然」や「人」が中心であるということなのです。
◆新たな価値観との融合◆
近年では、地区内の古い建物や景観を保全する活動が住人を中心に展開されています。
その一つに銭湯だった場所をギャラリーとして利用する「スカイ・ザ・バスハウス」があります。
煙突や入口の暖簾が印象的な銭湯ですが、内部はモダンアートの空間に改装されています。
また、築100年の布問屋別邸をユニークな発想で活用している事例もあります。
1階の座敷部分を有償で一般に貸し出し、2階はシェアハウスとして学生等に住んでもらい 、
掃除や窓の開け閉めといった日常的なメンテナンスをお願いするというものです。
また、定期的に上野・谷中を巡る歴史探訪会や子供と参加する寺子屋プロジェクトなどが
開催され,地区外の方でも伝統的な日本家屋で体験できるイベントに参加することができます。
古いものを価値のあるものとして受け継ぐにはご紹介したような視点や
価値観を変えた活用方法を見出すことが大切なのかもしれません。
時代を超えてなお人々から愛される路地と谷中の町を皆さんも是非体験してみて下さい。
さて、今回のコラムは如何でしたでしょうか?
次回は「日本の路地空間あれこれ~静岡編~」をお話したいと思います。
それではまた次回、お会いしましょう。
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◇コラム執筆者◇
「住宅の歴史」から考える理想の暮らしコラム。
ライフスタイルの変化から見えてくるものとは?
住宅の昔と今を紐解きながら、理想の暮らしを考える。
一級建築士 市川 忍(ポラス暮し科学研究所)
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